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アサーションとは?自分も相手も大切にする伝え方

記事のサマリ

アサーションとは、自分の気持ちや考えを大切にしながら、相手のことも同じように尊重して伝えるコミュニケーションのあり方です。我慢して言わないのでも、強く押しつけるのでもなく、その中間のバランスをめざします。「DESC法」のように手順に沿って言い方を整理する方法もあり、認知行動療法では考え方の見直しとあわせて練習されることがあります。場面に合わせて少しずつ身につけていくスキルなので、うまくいかない日があっても問題ありません。つらさが強いときは、専門機関への相談も大切です。

言いたいことを我慢して、あとからもやもやする。逆に、つい強い言い方になって後悔する。コミュニケーションでこんな揺れを感じることはありませんか。アサーションは、自分も相手も大切にしながら気持ちを伝えるための考え方とスキルです。この記事では、アサーションの意味から3つの自己表現の違い、DESC法を使った伝え方、具体例までを、はじめての方にもわかるようにていねいに整理していきます。

この記事で整理できること

  • アサーションの基本的な意味と、何のために役立つのか
  • 攻撃的・非主張的・アサーティブの3つの自己表現の違い
  • DESC法を使った伝え方の4つの手順
  • 仕事や人間関係を題材にした具体例
  • 無理なく身につけるための練習のコツ
  • セルフケアとして取り組むときの注意点

アサーションとは?

アサーションとは、自分の気持ちや考えを大切にしながら、相手のことも同じように尊重して伝えるコミュニケーションのあり方です。「アサーション(assertion)」はもともと「主張」を意味する言葉ですが、ここでは自分の意見を一方的に通すことではなく、自分と相手の両方を大事にする伝え方を指します。

わたしたちは、つい「我慢して言わない」か「強く言いすぎる」かのどちらかに偏ってしまうことがあります。アサーションがめざすのは、そのあいだにあるバランスのよい伝え方です。言いたいことを飲み込んでもやもやするのでも、相手を押しのけるのでもなく、自分の気持ちを誠実に届けることを大切にします。

認知行動療法では、アサーションがコミュニケーションを整えるスキルとして取り入れられることがあります。基礎的な考え方は国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センターでも解説されています。あわせて認知行動療法とは?も読むと、考え方の整理と伝え方がどうつながるのかがつかみやすくなります。

3つの自己表現は何が違う?

自己表現のしかたは、大きく3つのタイプに分けて考えられます。アサーティブは、その両端のあいだにあるバランスのとれた伝え方です。違いを表で整理します。

タイプ特徴起こりやすいこと
攻撃的自分を優先し、相手を押しのける相手が傷つく、関係がぎくしゃくする
非主張的相手を優先し、自分を抑える自分にもやもやが残る、我慢が積み重なる
アサーティブ自分も相手も大切にして伝えるおたがいに納得しやすく、関係が保たれやすい

どちらかが「悪い性格」というわけではなく、その場の状況や慣れによって、誰でもいずれかに偏ることがあります。大切なのは、いまの自分がどのタイプに寄りやすいかに気づくことです。気づくことが、伝え方を選び直す第一歩になります。

DESC法などの伝え方は?

アサーティブに伝えたいとき、言い方を整理する手がかりになるのが「DESC法(デスク法)」です。4つの頭文字に沿って、伝える内容を順番に組み立てていきます。

  1. Describe(描写) — 起きている事実を、相手を責めずに客観的に伝える
  2. Express(表現) — その事実について、自分の気持ちを「わたしは」を主語にして伝える
  3. Specify(提案) — してほしいことや代わりの案を、具体的に伝える
  4. Choose(選択) — 相手の返事に応じて、次にどうするかを考えておく

ポイントは、2つめで「あなたは」ではなく「わたしは」を主語にすることです。「あなたが悪い」と責める形ではなく、「わたしはこう感じた」と伝えると、相手も受け取りやすくなります。すべてを完璧に言おうとせず、流れの手がかりとして使ってみてください。

どんなふうに伝える?(具体例)

イメージがわくように、仕事と人間関係の場面を例に挙げます。同じ「断りたい」気持ちでも、伝え方でずいぶん印象が変わります。

【仕事の例:急な依頼を断りたいとき】 非主張的:(断れずに引き受け、残業が続いてつらくなる) 攻撃的:「いまさら無理です。なんでもっと早く言わないんですか」 アサーティブ:「今日は別の作業が立て込んでいて(描写)、急ぎだと難しく感じます(表現)。明日の午前でよければ対応できます(提案)。いかがでしょうか(選択)」

【人間関係の例:誘いを断りたいとき】 非主張的:(気が進まないまま参加し、疲れてしまう) 攻撃的:「そういうの興味ないから」 アサーティブ:「誘ってくれてうれしいんだけど(表現)、今週は少し休みたくて(描写)、今回は遠慮しておくね。また次の機会に声をかけてもらえたら(提案)」

同じ「断る」でも、事実と気持ちを分けて伝えると、相手を否定せずに自分の希望を届けられます。「断ったら嫌われるかも」という考えが浮かんだときは、コラム法とは?で受け取り方を整理してから伝え方を考えると、取り組みやすくなります。

練習のコツは?

アサーションは、知識として知るだけでなく、少しずつ試すことで身についていきます。とはいえ、いきなり難しい場面で使おうとすると負担が大きくなります。次のような工夫が役立ちます。

  • いきなり大事な場面で使わず、小さな場面から試す
  • 伝えたい内容を、DESC法に沿って事前に書き出してみる
  • 「わたしは」を主語にする言い回しに言いかえてみる
  • うまく言えた点を、ひとつでも見つけてねぎらう

大切なのは、完璧に伝えることよりも、自分を大切にして伝えようとした事実です。働く人向けの教材は、厚生労働省のこころの耳でも公開されているので、職場での伝え方を考えるときの参考になります。

取り組むときの注意点は?

最後に、セルフケアとして取り入れるときに心にとめておきたいことをお伝えします。

  • 相手を思いどおりに動かすための技術ではない(自分を誠実に伝えることが目的)
  • いつでもアサーティブでいなければ、と気負いすぎない
  • 伝えた結果がどうなるかは、相手しだいの部分もある
  • 強い怒りがあるときは、まず落ち着いてから伝える(イライラが止まらないときはどうする?も参考に)

アサーションは、自分を飾るための技術ではなく、自分の気持ちをそっと大切にするための考え方です。うまく言えない日があっても、それで失敗ではありません。気持ちの整理がつらいときや、人との関わりで苦しさが続くときは、無理をせず専門機関への相談も大切にしてください。

よくある質問

アサーションは生まれつきの性格で決まりますか?
性格だけで決まるものではなく、練習によって少しずつ身につけられるスキルと考えられています。もともと言いたいことを言いやすい人もいれば、我慢しがちな人もいますが、それは良い悪いではなく、これまでの慣れの違いです。手順を知って小さな場面から試していくと、自分なりの伝え方が見つかっていきます。
アサーションと自己主張は同じものですか?
自己主張という言葉は、自分の意見を通すことだけを指して使われることがありますが、アサーションはそれとは少し違います。アサーションがめざすのは、自分の気持ちを伝えながら相手の気持ちも尊重するバランスです。自分の意見を伝えることと、相手を大切にすることは、両立できるという考え方が土台にあります。
伝えても相手が変わらないときはどうすればよいですか?
アサーションは、相手を思いどおりに変えるための方法ではありません。めざすのは、自分の気持ちを誠実に伝えること自体です。伝えた結果がどうなるかは相手しだいの部分もあるため、結果よりも「自分を大切にして伝えられた」という過程に目を向けると、取り組みを続けやすくなります。
認知行動療法とアサーションはどう関係していますか?
アサーションは、認知行動療法のなかでコミュニケーションを整えるスキルとして扱われることがあります。「断ったら嫌われる」といった考え方のクセに気づき、別の見方を探したうえで、実際の伝え方を練習する、という流れで組み合わせて使われます。考え方の整理と伝え方の練習は、たがいに支え合う関係にあります。

次にできること

参考・出典

  1. 国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センター「認知行動療法とは」
  2. 厚生労働省 こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト

※ 本記事はセルフケア・教育を目的とした情報であり、特定の疾患の診断・治療を目的としたものではありません。つらさが強い・長く続く場合は、無理をせず医療機関や専門家への相談もご検討ください。