認知行動療法のやり方は?初心者向けの基本ステップを解説
認知行動療法のやり方は、考え方・気分・行動のつながりに注目しながら、気づく・整理する・試すという流れを少しずつ繰り返すのが基本です。まず落ち込んだ場面で頭に浮かんだ考えに気づき、その考えを書き出して整理し、別の見方や小さな行動を実際に試していきます。完璧をめざさず、日常のなかで無理なく続けることが大切です。なお、これは治療や診断に代わるものではありません。つらさが強いときは、専門機関への相談も大切です。
「認知行動療法に興味はあるけれど、何から始めればいいのかわからない」。そんなふうに感じている方は少なくありません。じつは、特別な道具がなくても、紙とペンがあれば今日から小さく始められます。この記事では、認知行動療法を自分で取り入れるときの基本ステップを、はじめての方にもわかるように、ていねいに整理していきます。
この記事で整理できること
- 認知行動療法を自分で始めるときの基本的な流れ
- 気づく・整理する・試すという3つのステップの中身
- 考えや気分を記録することの意味
- 無理なく続けるための工夫
- うまくいかないと感じたときの捉え方
- セルフケアとして取り入れるときの注意点
認知行動療法のやり方は?まずは全体の流れから
認知行動療法を自分で取り入れるときのやり方は、思っているよりもシンプルです。基本となるのは、「気づく → 整理する → 試す」という3つのステップを、日々のなかで少しずつ行き来することです。
特別な道具はいりません。紙とペン、あるいはスマートフォンのメモがあれば、今日から始められます。大切なのは、一度に完璧にやろうとしないこと。落ち込んだ場面を一つ取り上げて、そこで何を考えていたかにそっと目を向けるところから、すべては始まります。
考え方・気分・行動のつながりという土台をもう少し知りたい方は、こちらもあわせてご覧ください。
ステップ1「気づく」では何をする?
最初のステップは、つらくなった場面で「頭にどんな考えが浮かんだか」に気づくことです。気分は出来事そのものより、その受け取り方に大きく左右されます。だからこそ、まずは自分の考えを見える形にします。
たとえば、こんなふうにメモしてみます。
- どんな出来事だったか(例:会議で発言したら反応が薄かった)
- そのときの気分(例:不安、落ち込み)
- 頭に浮かんだ考え(例:「やっぱり自分はダメだ」)
このとき浮かぶ考えは「自動思考」と呼ばれ、とっさに、ほとんど無意識に浮かんでくるのが特徴です。最初はうまく書けなくても大丈夫です。気づこうとすること自体が、もう立派な一歩です。
ステップ2「整理する」では何をする?
次のステップは、書き出した考えを「別の角度から眺めて整理する」ことです。考えを消したり、無理に前向きにしたりするのではなく、見方の選択肢を増やすイメージで進めます。
整理するときは、次のような問いかけが手がかりになります。
| 問いかけ | ねらい |
|---|---|
| その考えの根拠は? | 事実と解釈を分けて見る |
| 反対の事実はない? | 見落としている情報に気づく |
| 親しい人なら何と言う? | 自分に厳しすぎないか確かめる |
| 別の見方はできない? | 受け取り方の幅を広げる |
たとえば「やっぱり自分はダメだ」という考えに対して、「反応が薄かっただけで、内容を否定されたわけではない」「時間が押していて急いでいたのかもしれない」と書き添えてみる。こうして整理する作業を体系化したものが、コラム法や思考記録表です。
ステップ3「試す」では何をする?
整理して見えてきた新しい見方や小さな行動を、実際の生活のなかで試してみるのが3つ目のステップです。頭で考えるだけでなく、行動で確かめることで、気づきが実感に変わっていきます。
無理のない、小さな一歩から始めるのがコツです。たとえば、次のようなものです。
- 「忙しいのかも」と考え直して、もう一度連絡してみる
- 不安で避けていた場面に、短い時間だけ参加してみる
- 落ち込んだ日に、気分が少し上向く行動を一つだけ試す
うまくいくこともあれば、そうでないこともあります。どちらの結果も「自分の見方を確かめる材料」になるので、失敗ととらえる必要はありません。試した結果を、また「気づく」に持ち帰って繰り返していきます。
記録をつけることには、どんな意味がある?
ここまでのステップで「書く」ことが何度も出てきました。記録をつけるのには、いくつかの意味があります。
- 頭の中だけだとぐるぐるしがちな考えを、外に出して客観的に眺められる
- 後から読み返すと、自分の考え方のクセに気づきやすい
- 小さな変化や、できたことに目を向けやすくなる
書き方は、長い文章である必要はありません。単語やひとこと、箇条書きで十分です。働く人向けには、厚生労働省のポータルサイトこころの耳でも、セルフケアや認知行動変容アプローチの教材が紹介されています。基礎的な解説は、日本初の認知行動療法専門の研究機関である国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センターでも公開されています。
決まった様式を使いたい方は、思考記録表のテンプレートから始めると取り組みやすくなります。
続け方とうまくいかないときは、どう考える?
最後に、無理なく続けるための工夫と、うまくいかないと感じたときの捉え方をお伝えします。続けるうえで大切なのは、気負いすぎないことです。
- 毎日やろうと決めず、気持ちが揺れたときだけ書く
- 完璧な整理をめざさず、気づいたことをメモするだけでもよしとする
- できなかった日があっても、自分を責めない
- うまくいかないと感じたら、それも一つの大切な気づきとして扱う
「ちゃんとやらなきゃ」と力が入ってしまうのも、じつは考え方のクセの一つかもしれません。自分の考え方のパターンを知りたいときは、チェックリストを使って確かめてみるのも一つの方法です。
そして、考えを掘り下げるなかでかえってつらくなることもあります。つらさが強い・長く続くと感じるときは、無理に一人で続けず、専門機関への相談も大切にしてください。一人で取り組むことと、誰かに頼ることは、どちらも自分を大事にするセルフケアです。
認知行動療法のやり方に、「正解」や「合格点」はありません。気づこうとした自分、書いてみた自分を、まずはやさしく認めてあげてください。小さな一歩の積み重ねが、いつのまにか自分を支える習慣になっていきます。
よくある質問
何から始めればいいですか?
毎日やらないと意味がないですか?
書くのが苦手でも取り組めますか?
一人でやっていて不安になったらどうすればいいですか?
参考・出典
※ 本記事はセルフケア・教育を目的とした情報であり、特定の疾患の診断・治療を目的としたものではありません。つらさが強い・長く続く場合は、無理をせず医療機関や専門家への相談もご検討ください。