思考記録表とは?書き方・記入例・テンプレートを紹介
思考記録表とは、つらく感じた場面で頭に浮かんだ考え(自動思考)や、そのときの気分・行動を、いくつかの欄に分けて書き出していくシートです。頭の中だけでぐるぐる巡っていたことを紙の上に出すことで、自分の受け取り方に気づき、別の見方も探しやすくなります。認知行動療法でよく使われる方法ですが、治療や診断に代わるものではありません。つらさが強いときは、専門機関への相談も大切です。
もやもやした気持ちが、頭の中だけで何度も巡ってしまう。そんなとき、考えていることを一度「外」に出してみると、気持ちが少し整理されることがあります。思考記録表は、その「書き出して整理する」ことを助けてくれる道具です。この記事では、思考記録表の意味から書き方、場面別の記入例まで、はじめての方にもわかるようにていねいに紹介します。
この記事で整理できること
- 思考記録表が持つ意味と、書く目的
- 表に書き出す基本の項目と、それぞれの役割
- 場面別の具体的な記入例
- テンプレートを使った進め方の流れ
- 無理なく続けるための工夫
- セルフケアとして取り組むときの注意点
思考記録表とは?
思考記録表とは、つらく感じた場面で頭に浮かんだ考えや、そのときの気分・行動を、いくつかの欄に分けて書き出していくシートのことです。認知行動療法のなかでよく使われる、基本的なワークの一つです。
わたしたちは、気分が落ち込んでいるとき、頭の中でいろいろな考えがぐるぐると巡りがちです。けれども、その考えは多くの場合、はっきりと言葉にされないまま、感情だけがふくらんでいきます。思考記録表は、その言葉になりきっていない考えを、いったん紙の上に出すための道具です。
外に出して眺めてみると、「自分はこんなふうに受け取っていたんだ」と気づきやすくなります。気づけると、別の見方の選択肢を探す余裕も生まれます。考えを無理に変えるためではなく、扱いやすくするために書く、というのが基本の姿勢です。
思考記録表には何を書く?
書く項目は、シートによって少しずつ違いますが、基本となるのは次の要素です。まずは全体の地図として、ざっと眺めてみてください。
| 欄 | 書く内容 |
|---|---|
| 状況 | いつ・どこで・誰と・何があったか(事実だけ) |
| 気分 | わきあがった気分と、その強さ(0〜100%) |
| 自動思考 | そのとき頭に浮かんだ考え |
| 根拠 | その考えを裏づける事実 |
| 反証 | その考えと合わない事実・別の見方 |
| 適応的思考 | 根拠と反証をふまえた、バランスのよい考え |
| 結果 | 書いたあとの気分の変化(0〜100%) |
最初からすべての欄を埋めようとしなくて大丈夫です。慣れるまでは「状況・気分・自動思考」の3つだけでも、十分に役立ちます。事実と考えを分けて書くことが、思考記録表の大切なポイントです。
思考記録表の記入例は?
言葉だけではイメージしにくいので、場面別の記入例を見てみましょう。あくまで一例として、書き方の雰囲気をつかむ参考にしてください。
まずは、仕事で送ったメールの返信がこない、という場面の例です。
状況:午後、取引先に送ったメールの返信が、夕方になっても来なかった。 気分:不安(80%)、落ち込み(60%) 自動思考:何か失礼なことを書いてしまったのかもしれない。嫌われたのかもしれない。 根拠:いつもより返信が遅い。 反証:先方が忙しい時期だと聞いていた。過去にも返信が翌日になったことがあった。 適応的思考:失礼があったとは限らない。明日まで様子を見てみよう。 結果:不安(80%→40%)、落ち込み(60%→30%)
次に、家庭での場面の例です。
状況:夜、家族に話しかけたら、そっけない返事だった。 気分:さみしさ(70%)、いらだち(50%) 自動思考:自分のことをどうでもいいと思っているんだ。 反証:相手も疲れていた様子だった。いつもはふつうに話してくれる。 適応的思考:今日はたまたま余裕がなかっただけかもしれない。
気分の強さが少し下がっていることに気づけたら、それで十分です。ゼロにすることが目的ではありません。
テンプレートはどう使えばいい?
決まった様式がないと書けないわけではありませんが、欄の整ったテンプレートがあると、はじめのうちは取りかかりやすくなります。進め方の流れは、次のようなイメージです。
- 場面を一つ選ぶ — 気分が大きく動いた出来事を、一つだけ取り上げる
- 状況と気分を書く — 事実と、気分の強さ(%)を先に書き出す
- 自動思考を書く — 頭に浮かんだ言葉を、そのまま書く
- 根拠と反証を探す — その考えに合う事実・合わない事実を、両方さがす
- 適応的思考をまとめる — 両方をふまえた、バランスのよい見方を書く
- 結果を確かめる — 書いたあとの気分の強さを、もう一度書く
ひととおり書けるようになるまでは、テンプレートの欄を一つずつ埋めていくと迷いにくくなります。基本的な解説は、国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センターでも公開されています。
実践する:自動思考とは?気分が落ち込む仕組みと気づき方を解説
続けるコツは?
たくさん書くことよりも、無理なく続けることのほうが大切です。続けるための工夫を、いくつかお伝えします。
- 一度に一つの場面だけにしぼる
- 完璧な文章をめざさず、浮かんだ言葉をそのまま書く
- 書く時間を、夜の数分など決めておく
- すべての欄を埋めようとしない(3欄だけでもよい)
- 書けない日があっても、自分を責めない
働く人向けには、厚生労働省のポータルサイトこころの耳でも、セルフケアに役立つ教材が提供されています。続けるうちに、自分がよく使いがちな考え方のクセが見えてくることもあります。それも、書き続けたからこそ得られる気づきです。
思考記録表に取り組むときの注意点は?
最後に、セルフケアとして取り入れるときに心にとめておきたいことを、お伝えします。
- 考えを「正しく書かなきゃ」と気負いすぎない
- つらい気持ちを無理に消そうとしない(選択肢を増やすイメージで)
- 書いていてつらくなったら、いったん手を止める
- つらさが強い・長く続くときは、専門機関や相談窓口への相談も大切にする
思考記録表は、自分を採点するための道具ではなく、自分の気持ちをそっと整理するための道具です。うまく書けない日があっても、それで十分です。やさしいきもちで、自分のペースで続けてみてください。つらさが強いときは、一人で抱え込まず、専門機関に相談することも大切なセルフケアです。
よくある質問
思考記録表は毎日書かないといけませんか?
うまく考えが書き出せないときはどうすればいいですか?
考えを書き換えれば、つらい気持ちはなくなりますか?
一人で書いていて、かえってつらくなったらどうすればいいですか?
参考・出典
※ 本記事はセルフケア・教育を目的とした情報であり、特定の疾患の診断・治療を目的としたものではありません。つらさが強い・長く続く場合は、無理をせず医療機関や専門家への相談もご検討ください。