詳細記事

行動活性化とは?やる気が出ないときの始め方を解説

記事のサマリ

行動活性化とは、気分が落ち込んで動けないときに、まず小さな行動を少しずつ増やしていくことで気分を整えていく認知行動療法のワークです。「やる気が出てから動く」のではなく「動くことで気分があとからついてくる」という順番に注目し、無理のない行動から取り組みます。活動記録を使って、どんな行動のときに気分が動いたかを眺めると、自分に合う活動が見えてきます。診断や治療に代わるものではないため、つらさが強いときは専門機関への相談も大切です。

やらなければと思っているのに、体が動かない。動けない自分を責めて、さらに気持ちが沈んでしまう。そんな悪循環に入ってしまうことはありませんか。行動活性化は、その流れをやさしくほどくための、認知行動療法の代表的なワークです。この記事では、行動活性化の意味から始め方の手順、活動記録の例までを、はじめての方にもわかるようにていねいに整理していきます。

この記事で整理できること

  • 行動活性化の基本的な意味と、何のために使うのか
  • やる気ではなく行動から整える理由
  • 小さな行動を少しずつ増やす手順
  • 活動記録の書き方と記入例
  • 無理なく続けるためのコツ
  • セルフケアとして取り組むときの注意点

行動活性化とは?

行動活性化とは、気分が落ち込んで動けないときに、まず小さな行動を少しずつ増やしていくことで、気分を整えていく認知行動療法のワークです。気持ちが沈むと、活動が減り、活動が減るとさらに気分が沈む、という悪循環に入りやすくなります。行動活性化は、その悪循環に行動の側からやさしく働きかけ、流れを少しずつ変えていく方法です。

ここで大切にしたいのは、気分が整うのを待たずに、まず動いてみるという発想です。とはいえ、いきなり大きなことをするわけではありません。「これくらいならできそう」と思える行動を、生活のなかに少しずつ戻していくイメージです。

基礎的な考え方は、国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センターでも解説されています。あわせて認知行動療法とは?も読むと、行動・気分・考えのつながりがつかみやすくなります。

なぜ行動から整えるとよい?

「やる気が出たら動こう」と考えるのは、ごく自然なことです。けれど気分が沈んでいるときは、そのやる気がなかなかわいてきません。待っているあいだに動けない時間が長くなり、かえって気持ちが沈んでしまうこともあります。

行動活性化が注目するのは、この順番です。やる気が出てから動くのではなく、動くことで気分があとからついてくる、という流れに目を向けます。たとえば気が進まないまま少し散歩してみたら、思っていたより気持ちが軽くなった、という経験は誰にでもあるかもしれません。

よくある順番行動活性化の順番
やる気が出る → 行動する小さく行動する → 気分が動く
動けない時間が続きやすいできた感覚が積み重なりやすい

気分を直接コントロールするのは難しいものですが、行動は自分で選びやすいものです。だからこそ、扱いやすい行動から始めることに意味があります。

どうやって始める?

むずかしく考える必要はありません。次の手順で、小さな行動から少しずつ増やしていきます。

  1. とても小さな行動を選ぶ — 「これならできそう」よりさらに一段小さくする
  2. 行ってみる — できなくても自分を責めず、できた範囲でよしとする
  3. 気分の変化に気づく — 行動の前後で気分がどう動いたかを短くメモする
  4. 少しずつ広げる — できたら、別の行動や少し大きめの行動も試してみる

ポイントは、最初の行動を小さくしすぎるくらいに設定することです。散歩ではなく玄関まで出る、掃除ではなく机を一か所だけ拭く、というくらいで十分です。できたという感覚そのものが、次の一歩につながります。

活動記録はどう書く?(記入例)

行動活性化では、行ったことと気分を簡単に書きとめる「活動記録」がよく使われます。どんな行動のときに気分が動いたかが見えてくると、自分に合う活動の手がかりになります。あくまで一例なので、自分の言葉に置きかえて使ってみてください。

【記入例】 9:00 起きてカーテンを開けた/気分 30点 10:30 玄関まで出て少し外の空気を吸った/気分 40点 12:00 近所を5分だけ歩いた/気分 55点 15:00 好きな音楽を1曲聴いた/気分 60点

【気づき】 体を少し動かしたり外に出たりしたときに、気分の点数が上がりやすかった

点数は0〜100点くらいのおおまかな目安で大丈夫です。小さな上がり下がりに気づけると、「この活動は自分に合っているかもしれない」という手応えが見えてきます。同じ形式で1週間ぶんを記録したい場合は、1週間セルフケア記録表を使うと欄が用意されていて取り組みやすくなります。

続けるコツは?

行動活性化は、続けることで自分に合う活動が見えやすくなります。とはいえ、気負うと長続きしません。次のような工夫が役立ちます。

  • 「楽しめそう」「少し気が向く」行動から選ぶ
  • 一日のなかに一つだけ、と決めて始める
  • できた日もできなかった日も、記録にそのまま残す
  • 行動のあとに「少し気分が動いた」と感じられたら十分

大切なのは、量よりもできた感覚を少しずつ積み重ねることです。やる気が出ないとき全般の向き合い方は、やる気が出ないときはどうする?でも整理しています。働く人向けの教材は、厚生労働省のこころの耳でも公開されています。

取り組むときの注意点は?

最後に、セルフケアとして取り入れるときに心にとめておきたいことをお伝えします。

  • 行動の大きさや量で、自分を採点しない
  • できなかった日があっても、それで失敗ではない
  • 「楽しまなければ」と力を入れすぎない(少し気が向く程度で十分)
  • 気分がすぐに上がらない日もあると、あらかじめ知っておく

行動活性化は、自分を追い立てるためのものではなく、止まってしまった流れをそっと動かすための道具です。動けない日があっても、それは自然なことです。つらさが強いときや長く続くときは、無理をせず専門機関への相談も大切にしてください。

よくある質問

やる気が出ないのに、本当に行動から始めてよいのですか?
はい、行動活性化は「やる気が出てから動く」ではなく「動くことで気分があとからついてくる」という順番を大切にしています。気分が整うのを待っていると、動けない時間が長くなりがちです。まずはとても小さな行動から始め、できたらそれで十分と捉えると、無理なく取り組みやすくなります。
どのくらい小さな行動から始めればよいですか?
「これならできそう」と思えるよりさらに一段小さくするのが目安です。たとえば散歩ではなく玄関まで出る、片づけではなく机の上を一か所だけ、というくらいで十分です。小さすぎると感じるくらいが、最初の一歩としてはちょうどよいことが多いです。できたという感覚を積み重ねることを優先してください。
活動記録は毎日つけないと意味がありませんか?
毎日でなくても問題ありません。書ける日に、行ったことと気分を短くメモするだけでも役立ちます。回数の多さよりも、どんな行動のときに気分が少し動いたかに気づく機会を積み重ねることが大切です。負担にならないペースを優先して続けてみてください。
行動活性化はコラム法とどう違いますか?
コラム法が考え方の整理に注目するのに対し、行動活性化は行動を少しずつ増やすことに注目するワークです。気分が落ち込んで考える気力もわかないときは、まず行動活性化から始めると取り組みやすいことがあります。どちらも目的は近く、状況に合わせて使い分けたり組み合わせたりできます。

次にできること

参考・出典

  1. 国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センター「認知行動療法とは」
  2. 厚生労働省 こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト

※ 本記事はセルフケア・教育を目的とした情報であり、特定の疾患の診断・治療を目的としたものではありません。つらさが強い・長く続く場合は、無理をせず医療機関や専門家への相談もご検討ください。