詳細記事

心のフィルターとは?悪いことばかり目に入る理由を解説

記事のサマリ

心のフィルターとは、よい面やうまくいった部分が目に入らず、悪い面や気になる部分ばかりに注意が向いてしまう考え方のクセです。専門的には「選択的注目」とも呼ばれ、一つの欠点が全体の印象を暗く染めてしまうことがあります。たとえば、ほめられた言葉より一つの指摘だけが記憶に残るような状態です。気づいたときは「見落としているよい面はないか」と問い直すと、気持ちが扱いやすくなります。疲れているときほど出やすいクセなので、自分を責める必要はありません。

たくさんほめてもらったのに、たった一つの指摘だけが頭から離れない。そんな経験はありませんか。これは、真面目で一生懸命な人ほど起こりやすい考え方です。見方が狭くなっているだけで、感じ方が悪いわけではありません。この記事では、心のフィルターの仕組みをていねいに見ながら、無理なくゆるめていくヒントを整理していきます。

この記事で整理できること

  • 心のフィルターの意味と心理的な背景
  • 心のフィルターが起こりやすい場面
  • 心のフィルターが強いと起こりやすいこと
  • 心のフィルターに気づくための視点
  • 心のフィルターをゆるめる具体的な方法
  • 関連するワークと向き合うときの注意点

心のフィルターとは?

心のフィルターとは、全体のなかにあるはずのよい面やうまくいった部分が見えにくくなり、悪い面や気になる部分ばかりに注意が向いてしまう考え方のクセです。専門的には「選択的注目(selective abstraction)」とも呼ばれ、認知行動療法でよく扱われる代表的な考え方のクセの一つです。

イメージとしては、一滴のインクがコップ一杯の水全体を濁らせるような状態です。たとえば、発表で多くの人にほめてもらったのに、たった一つの指摘だけが心に残り、「うまくいかなかった」と感じてしまう。そんなふうに、一部のネガティブな情報が全体の印象を暗く染めてしまいやすくなります。

心のフィルターは、どんな場面で起こりやすい?

心のフィルターは、とくに次のような場面で顔を出しやすくなります。

  • 仕事で多くの評価のなかに一つだけ指摘があったとき
  • 一日を振り返って、できなかったことだけを思い出すとき
  • 人と話したあと、自分の失言だけが頭に残るとき
  • 疲れていたり、気分が落ち込んでいたりするとき

どれも、真面目に頑張っている人や、責任感が強い人ほど直面しやすい場面です。よりよくしたいという気持ちが強いほど、足りない部分に目が向きやすくなります。つまり、前向きに取り組んでいるからこそ出てくるもの、とも言えます。

心のフィルターが強いと、何が起こりやすい?

よい面が視野に入らなくなるため、次のようなことが起こりやすくなります。

  • できたことを正しく振り返れなくなる
  • 自分への評価が実際より低くなってしまう
  • 一つの失敗で一日全体が台無しに感じられる
  • ほめ言葉を素直に受け取りにくくなる

その結果として、気分の落ち込みや自信のゆらぎにつながることがあります。ただ、ここまで読んだ時点で「これは注意の向き方のクセなんだ」と知ることができました。見落としていたよい面があるかもしれない、と気づけただけでも、見え方は少しずつ変わっていきます。

心のフィルターに気づくには?

まずは、気づくことから始めます。一日を振り返ったとき、次のような状態になっていたら、心のフィルターが顔を出しているサインかもしれません。

「思い出すのは悪かったことばかり」「よかったことが一つも浮かばない」「指摘だけが頭から離れない」

落ち込んだとき、「いま、悪い面だけを集めて見ていないか」と振り返ってみてください。気づくだけで十分です。無理に明るく考え直す必要はありません。

心のフィルターをゆるめるには?

気づけたら、次はやさしく視野を広げてみましょう。次の3つの問いかけが役立ちます。

  1. 見落としているよい面はないか —「うまくいった部分は一つもなかったか」
  2. 全体のうちどのくらいか —「気になる点は全体の何割で、残りはどうだったか」
  3. 大切な人なら何に注目するか —「友人の一日なら、どこをよかったと言ってあげるか」

書き出してみると、見え方が変わってくることがあります。

心のフィルターの考えゆるめた考え
指摘されたから発表は失敗だった多くはよい反応で、改善点が一つ見つかった
今日は何もできなかったできたこともあった。思い出せていないだけかもしれない
あの一言で全部台無しだ気になる一場面はあったが、他はおだやかに話せた

実際に試す:コラム法を使うと、この問い直しを書き出しながら練習できます。なお、認知行動療法の考え方の基礎は、国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センターでも解説されています。働く人向けには、厚生労働省のこころの耳でもセルフケアの教材が公開されています。

心のフィルターと向き合うときの注意点は?

最後にひとつだけ。心のフィルターを「直すべき欠点」としてとらえてしまうと、かえって「うまく直せない自分はダメだ」と、また悪い面だけに注目して自分を責めてしまうことがあります。

あくまで、気づいて、少し視野を広げてみるものです。悪い面に気づく力をなくす必要はありません。そして、つらさが強い・長く続くと感じるときは、一人で抱えこまず、専門機関への相談も大切にしてください。

よくある質問

心のフィルターと白黒思考は同じですか?
近いものですが、同じではありません。白黒思考が物事を極端な二択でとらえるクセを指すのに対して、心のフィルターは全体のうち悪い面だけに注意が偏るクセを指します。二つが重なると、一つの欠点を取り上げて「全部ダメ」と感じやすくなることがあります。
悪い面に気づくことは大切なのではないでしょうか?
そのとおりで、リスクや課題に気づく力は、わたしたちを守る大切な働きです。問題なのは気づくこと自体ではなく、よい面がまったく見えなくなるほど注意が偏ってしまうときです。悪い面を消すのではなく、見落としているよい面も視野に入れていくイメージです。
よい面を見ようとしても、つい悪いほうばかり考えてしまいます。
それは自然なことです。長く慣れた注意の向け方は、すぐには変わりません。ただ、「また悪い面だけを見ているな」と気づけた時点で、すでに前進しています。書き出して練習を重ねると、少しずつ視野が広がっていきます。焦らず取り組んで問題ありません。

次にできること

参考・出典

  1. 国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センター
  2. 厚生労働省 こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト

※ 本記事はセルフケア・教育を目的とした情報であり、特定の疾患の診断・治療を目的としたものではありません。つらさが強い・長く続く場合は、無理をせず医療機関や専門家への相談もご検討ください。