認知行動療法とACTの違いは?使い分けをわかりやすく解説
ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)は、認知行動療法の流れから生まれたアプローチの一つです。大きな違いは、考えとの向き合い方にあります。従来の認知行動療法が「その考えは極端ではないか」と考えの内容を検討していくのに対して、ACTは考えの内容を変えようとするより、考えと少し距離をとり、自分が大切にしたいこと(価値)に沿って行動することに重きを置きます。どちらが優れているということではなく、状況や好みによって合うものが異なります。つらさが強いときは、専門機関への相談も大切です。
認知行動療法について調べていると、「ACT」という言葉を見かけることがあります。名前は似ていなくても、じつはACTは認知行動療法と深いつながりを持つアプローチです。「考えを見直すのが合わないかも」と感じた方にとって、別の選択肢になることもあります。この記事では、二つの違いと使い分けを、共通点もふまえながらていねいに整理していきます。
この記事で整理できること
- ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)の基本的な意味
- 認知行動療法とACTに共通している考え方
- 考えとの向き合い方に見られる違い
- ACTが大切にする「価値に沿った行動」とは
- それぞれが向いている場面の目安
- セルフケアとしての取り入れ方
ACTとは?
ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)は、認知行動療法の流れのなかから生まれた、比較的新しい世代のアプローチです。名前は少しむずかしく聞こえますが、二つの言葉に分けると意味が見えてきます。
「アクセプタンス(acceptance)」は、つらい考えや気分を無理に追い払おうとせず、あるものとして受けとめる姿勢を指します。「コミットメント(commitment)」は、自分が大切にしたい方向へ、行動を重ねていくことを指します。つまりACTは、「つらさを抱えながらでも、自分の大切にしたいことに向かって動いていく」ことを支えるアプローチだといえます。
認知行動療法とACTの共通点は?
違いを見る前に、共通している部分を押さえておくと、全体像がつかみやすくなります。
ACTは、認知行動療法とまったく別のところから生まれたわけではありません。どちらも、わたしたちの「考え方」「気分」「行動」がたがいに影響し合っているという見方を土台にしています。そして、頭の中だけで完結させず、実際の生活のなかで小さく試していくことを大切にする点も共通しています。
考え方の基礎は、日本初の認知行動療法専門の研究機関である国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センターでも解説されています。ACTも、この大きな流れの一部に位置づけられています。つまり両者は、対立するものではなく、地続きの関係にあります。
違いは?
では、どこが違うのでしょうか。いちばんの違いは、つらい考えとの向き合い方にあります。
従来の認知行動療法は、「その考えは極端になっていないか」「別の見方はないか」と、考えの内容そのものをやさしく検討していきます。いっぽうACTは、考えの内容を変えようとするより、考えと少し距離をとり、その考えを抱えたままでも価値に沿って動けるようにすることに重きを置きます。
| 考えを検討する認知行動療法 | 考えと距離をとり価値に沿うACT | |
|---|---|---|
| 向き合い方 | 考えの内容を見直し、整理する | 考えの内容はそのままに、距離をとる |
| 目指すこと | 受け取り方の選択肢を増やす | 価値に沿った行動を増やす |
| つらい考えへの姿勢 | 極端さをゆるめていく | あるものとして受けとめる |
どちらも「考えに振り回されにくくする」という目的は同じです。そこへ向かう道すじが少し違う、と捉えると分かりやすいかもしれません。
価値に沿った行動とは?
ACTを理解するうえで欠かせないのが、「価値(value)」という考え方です。価値とは、自分が人生で大切にしたい方向のことです。たとえば「人とのつながりを大事にしたい」「誠実でありたい」「学び続けたい」といったものです。
ACTでは、つらい考えや不安が浮かんでも、それを消すことに力を注ぐのではなく、「自分の大切にしたい方向は何か」を見つめ、そちらへ一歩踏み出すことを支えます。不安を抱えたままでも、大事にしたい人に連絡してみる。緊張しながらでも、やってみたかったことに手を伸ばしてみる。そんなふうに、気分に行動を支配されすぎないようにしていきます。
向いている場面は?
どちらが優れているということではなく、場面や好みによって合うものが変わります。目安として、次のように考えてみてください。
- 考えを書き出して整理すると気持ちが落ち着く方には、考えを検討していく認知行動療法的なアプローチが取り組みやすいことがあります
- 「見直そうとしても考えがどうしても消えない」「もう十分考えた」と感じる方には、考えと距離をとるACT的なアプローチが合うことがあります
- 「何を大切にしたいのか分からなくなった」と感じるときには、価値を見つめ直すACTの視点がヒントになることがあります
働く人向けのセルフケア教材は、厚生労働省のポータルサイトこころの耳でも公開されています。あわせて参考にしてみてください。
どう取り入れる?
最後に、セルフケアとして無理なく取り入れるためのヒントをお伝えします。どちらか一つに絞る必要はありません。
- まずは認知行動療法的に考えを整理してみて、それでも残るつらさは、ACT的に「あるもの」として受けとめてみる
- 落ち込んだとき、「この考えを変えよう」とするより、「この考えがあっても、いま大切にしたいことは何か」と問い直してみる
- 完璧を目指さず、小さな一歩を試すことそのものを大切にする
二つのアプローチは、どちらが正解というものではありません。今日の自分にしっくりくるほうを、そのときどきで選んでいけば十分です。力が入りすぎてしまったら、それもまた、やさしく受けとめてあげてください。つらさが強い・長く続くと感じるときは、一人で抱えこまず、専門機関への相談も大切にしてください。
よくある質問
ACTは認知行動療法とはまったく別のものですか?
どちらか一方だけを選ばないといけませんか?
「考えを変えなくていい」というのは、放っておくということですか?
ACTは自分一人でも取り入れられますか?
参考・出典
※ 本記事はセルフケア・教育を目的とした情報であり、特定の疾患の診断・治療を目的としたものではありません。つらさが強い・長く続く場合は、無理をせず医療機関や専門家への相談もご検討ください。