認知行動療法とマインドフルネスの違いは?使い分けを解説
認知行動療法とマインドフルネスは、どちらも考えや気分とのつき合い方を整える方法ですが、向き合い方が異なります。認知行動療法は、浮かんだ考えが極端になっていないかをていねいに検討し、見方の選択肢を広げていくアプローチです。一方でマインドフルネスは、考えや感情を良し悪しで評価せず、「いま浮かんでいるな」とそのまま気づくことを大切にします。どちらが優れているということはなく、場面や自分の状態によって使い分けたり、組み合わせたりできます。つらさが強いときは、専門機関への相談も大切です。
「考えを整理するのがよいのか、それともただ気づくだけでよいのか」。セルフケアを調べていると、認知行動療法とマインドフルネスという二つの言葉に出会い、どう違うのか迷うことがあるかもしれません。じつは、この二つは対立するものではなく、それぞれに得意な場面があります。この記事では、両者の共通点と違いを、対比しながらやさしく整理していきます。
この記事で整理できること
- マインドフルネスの基本的な意味と考え方
- 認知行動療法とマインドフルネスに共通する土台
- 考えを検討する姿勢と、評価せず気づく姿勢の違い
- それぞれが向いている場面の見分け方
- 両者を組み合わせる考え方(マインドフルネス認知療法)
- 日常への無理のない取り入れ方
マインドフルネスとは?
マインドフルネスとは、いま、この瞬間に起きていることに、良し悪しの評価をくわえずに注意を向ける心のあり方を指します。呼吸や体の感覚、聞こえてくる音などにそっと意識を向け、頭に浮かんでくる考えや感情を「いま、こういう考えが浮かんでいるな」とそのまま眺める。そんな練習として知られています。
ここで大切にされているのは、考えを変えようとしたり、消そうとしたりしないという姿勢です。考えや感情が浮かんでくること自体は自然なこととして受けとめ、それに巻き込まれすぎないように、やさしく注意を戻していきます。「何も考えない」ことではなく、「気づいて、戻す」を繰り返すことが中心になります。
認知行動療法とマインドフルネスの共通点は?
一見すると別々の方法に見える二つですが、じつは大切な土台を共有しています。どちらも出発点にあるのは、頭に浮かんだ考えと、自分自身を少し切り離して眺めるという姿勢です。
認知行動療法では、これを「自動思考に気づく」と表現します。マインドフルネスでは、「浮かんだ考えをただ観察する」と表現します。言葉は違っても、「考え=事実」と思い込んで巻き込まれてしまう状態から、いったん距離をとる、という方向性は共通しています。
また、どちらも「考えをなくすこと」を目的にしていない点も似ています。ネガティブな考えを敵とみなして消そうとするのではなく、扱いやすくしていく。この姿勢は、両者に通じる大切な共通点です。認知行動療法の基礎については、国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センターでも解説されています。
認知行動療法とマインドフルネスの違いは?
共通点がある一方で、考えへの「向き合い方」には、はっきりとした違いがあります。ひとことで言えば、考えを検討するのが認知行動療法、評価せず気づくのがマインドフルネスです。下の表で対比してみましょう。
| 観点 | 認知行動療法 | マインドフルネス |
|---|---|---|
| 考えへの姿勢 | 検討し、見方を広げる | 評価せず、そのまま気づく |
| 主に行うこと | 書き出して問い直す | 注意を向けて観察する |
| 向かう方向 | 考えの内容を整理する | 考えとの距離を整える |
| 大切にすること | 別の見方の選択肢を増やす | いまここに注意を戻す |
認知行動療法は、浮かんだ考えに対して「本当にそうだろうか」「別の見方はないか」とていねいに問い直し、見方の選択肢を増やしていきます。マインドフルネスは、その考えの内容には踏み込まず、「いま不安という気持ちがあるな」と気づいて、そっと注意を戻します。どちらが正しいということではなく、アプローチの方向が異なる、と捉えるとわかりやすくなります。
それぞれ、どんな場面に向いている?
向き合い方が違うため、力を発揮しやすい場面にも傾向があります。
認知行動療法が向いていると考えられるのは、考えの内容を具体的に整理したいときです。たとえば「メールの返信がない=嫌われた」のように、特定の考えが気分を強く左右しているとき、その考えを書き出して問い直すと、扱いやすくなることがあります。
一方でマインドフルネスが向いていると考えられるのは、考えがあふれて整理するどころではないとき、まず落ち着きを取り戻したいときです。頭がいっぱいで言葉にする余裕がないときには、呼吸や体の感覚に注意を戻すほうが、無理なく取り組めることがあります。働く人向けには、厚生労働省のポータルサイトこころの耳でも、セルフケアの教材が紹介されています。
認知行動療法とマインドフルネスは組み合わせられる?
二つは対立するものではないため、組み合わせて用いられることもあります。その代表的な考え方が、マインドフルネスの要素を認知行動療法に取り入れた「マインドフルネス認知療法(MBCT)」です。
この考え方では、まずマインドフルネスで考えとの距離を整えてから、必要に応じて認知行動療法的に考えを問い直す、というように、両者の良さを生かそうとします。気づいてから整理するという流れは、自然なつながりとも言えます。気持ちにまだ余裕があるときは認知行動療法で整理し、いっぱいいっぱいのときはマインドフルネスで落ち着く、というように、状態に合わせて行き来する使い方もできます。
認知行動療法とマインドフルネスをどう取り入れる?
最後に、日常への取り入れ方をまとめます。気負わず、できそうなところから試してみてください。
- まずはどちらか一方を軸にして、無理なく始める
- 考えを整理したい日は、紙に書き出して問い直してみる
- 頭がいっぱいの日は、数分だけ呼吸に注意を向けてみる
- うまくできなくても自分を責めず、「気づけたこと」を一歩とみなす
認知行動療法もマインドフルネスも、自分を追い込むための道具ではなく、自分をラクにするための道具です。「正しくやらなきゃ」と力が入ってしまったら、それも一つの考え方のクセかもしれません。なお、つらさが強い・長く続くと感じるときは、一人で抱えこまず、専門機関への相談も大切にしてください。
よくある質問
認知行動療法とマインドフルネスは、どちらから始めるとよいですか?
マインドフルネスは「何も考えない」ことですか?
二つを同時に取り入れてもよいのでしょうか?
自分一人で取り組んでも大丈夫ですか?
参考・出典
※ 本記事はセルフケア・教育を目的とした情報であり、特定の疾患の診断・治療を目的としたものではありません。つらさが強い・長く続く場合は、無理をせず医療機関や専門家への相談もご検討ください。